アパートの共用部分における自殺等や、車内での自殺等が不動産に与える影響はどうであろうか。ケースバイケースで判断は分かれそうである。以下それぞれについて裁判官の判断をみてみましょう。
➀本件は賃貸アパートの共用廊下で賃借人が自殺をしていたという事案であるが、自殺の現場が部屋の前であり、3部屋の賃料に影響するとし、その理由として現場が各居室の玄関前であり、住居者が出入りする際、通行せざるを得ないことから告知義務があると判断した。そして影響の期間につちえ一室当たり3割程度の家賃の低下が2年にわたり喪失したとしている。
②土地の購入後1年4か月前に土地上の自動車内での売主の夫の自殺が判明したという事案で、一般的にいえば自殺のあった空間は土地の売買における特定の空間ではないことから、土地の売買における嫌悪感とはもともと結びつきは強くないが、しかし、心理的嫌悪感は特定の空間との結びつきの強さだけでなく、契約締結の経緯・事故・事件の印象の強さ等を総合的に考慮して判断するところ、本件では買主から売主に対して「本件不動産につき何か問題はないか」と尋ねたところ、売主が積極的に自殺の事実を隠したという点を考慮して説明義務違反があり、契約の解除を認めたというものである。
要約
以上のように事故物件にあたるかどうかは場所的結びつき以外にも様々な考慮要素があり、売主、仲介者は知っていることについては説明義務を負っているものとして契約を締結すべきである。一方買主は、不動産に事故等の問題が過去に全くなかったのかについて念書をもらっておくか、或いは会話を録音しておく等証拠を残しておくことが抑止力の観点からも有効である。