不動産賃貸トラブル

立退き料の支払いなくして正当事由の存否を判断した事例

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以下、立退料の判断にたちいらずに正当事由の認めた事例を挙げていく。

➀築年数64年の木造2階建てで歩けばわかる程度に傾きがわかるほどの老朽化物件であった事案で、裁判では「老朽化が著しく、地盤崩落等の危険性すらあること、賃借人が薬局の移転先をみるけることも不可能ではないこと、賃貸人が本件建物を取り壊して生活の基盤となる新しいビルを建築する必要性が高いと認められることから正当事由が認められる」と判断した。

 

②昭和46年に建築されたの大規模集合住宅用建物につき、耐震基準の改正により耐震性能基準満たさなくなったことから解体の必要性を感じ、更新を拒絶した事案で、裁判では「耐震改修費用があまりにも過大である場合には解体するという賃貸人の判断は尊重されるとして、本件では耐震改修に総家賃収入の5年分に相当する額が見積もられていたこと等を理由に更新拒絶に正当事由が認められるとした。なお、本件では立退料の認定はなかったが、移転費用の補填を申し出ている等の事情があった」

 

③公共性の強い事業であったこと、団地が築後約40年経過しており、建物の設備性能水準が今日の居宅水準に適合しておらず、社会的に陳腐化していること、住宅需要の退会地域にありながら建替え前の団地の容積率が行政基準よりも大幅に低い水準にあること等を考慮して立退料の判断に至らずに更新拒絶に正当事由を認めた。なお、建替え後の優先入居や家賃減額措置等の提案も事前になされていた。

 

④賃借人二人がそれぞれ部屋を主たる住居としては使用していなかったという事案で、賃貸人においては所有する現在の住居が近隣に高層マンションが建設されたことにより住環境が悪化しており、本件建物が新築と大差ない費用がかかる大修繕を必要とする程度に老朽化していること、自らの老後の安定のために賃貸収入を得る必要があること等から、賃貸人の建物使用の必要性が賃借人よりもはるかに大きいことを理由に立退料なしで、解約申し入れに正当事由があると判断した。

以下、立退料の判断にたちいることなく正当事由を否定した事例

➀東京都港区白金にある築年数36年を経過した木造二階建てアパートにつき老朽化し建て替えが必要であるとして解約の申し入れがなされた事案で、老朽化はしているものの、土台や柱に腐食はみられず、外壁にもクラックが見られず、管理次第では後10年以上使用できるとした。一方で賃借人は病弱なこと、生活保護を受けており収入がないこと、高齢のため転居先がみつからないことから賃借人の建物使用の必要性が賃貸人のそれよりもはるかに大きいことを理由に、立退料の判断にもたちいることなく、正当事由を認めなかった。

②賃貸人は都心における土地の高度利用の社会的要請に鑑み、近代的なビルを建築する計画を有しているところ、賃借人以外はすでに明渡が完了しており、立退料を8000万円申し出ているという事案で、賃貸人の目的は、本件建物を自ら使用することでもなく、老朽化のため建て替えることでもなく、もっぱら都心部における土地の有効利用という目的のためであり、また、この再開発は国の公共事業ではなく、ビル建設の着工も不確定な状況にあるとして、かかる再開発は正当事由になりえないと判断し、立退料の多寡の判断に至らなかった。

要約

以上より、裁判所が立退料の判断に立ち入らずに正当事由があると判断するケースとしては、建物老朽化が相当進行している等の理由により建物を存続させている理由がない状態にいたっているか、賃貸人の使用の必要性が賃借人のそれをはるかに上回る場合や、賃借人に信頼関係破壊の背信事由がある場合といえる。

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