労働関係

解雇はダメ!退職勧奨!

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問題のある従業員を辞めさせたい場合に、懲戒解雇処分が可能であれば話は早いのであるが、懲戒解雇処分が有効になるケースはかなり限定されており、さらに厄介なことに懲戒解雇が無効となった場合に多額の金員【数百万円から数千万円】を従業員に支払う必要がでてくるということである。

従って、解雇ではなく退職勧奨をうまく活用し、退職金をいくらか支払って辞職してもらう方法が一番有効であるといえる。
しかし、この退職勧奨の方法が不適当であった場合、多額の慰謝料の対象となったり、最悪の場合辞職が無効となり、解決までの給料分の支払いをさせられる可能性がある。そこで違法な退職勧奨を以下みていきたい。

辞職が無効になる退職勧奨

この点、有効な退職勧奨とは➀回数・期間が退職を求める事情の説明や優遇措置等の退職条件の交渉に通常必要な限度にとどめること②名誉感情を害することのないように配慮すること③退職勧奨者の数・優遇措置の有無等を総合的に勘案し、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況でなかったことが必要である。

➀出退勤の情報につき虚偽の申告をしており、それが判明し、従業員に対して自主退職するか懲戒処分に進退をゆだねるかと主張し、懲戒処分の場合は100%とはいわないがほぼほぼ解雇になる、自主退職の場合は退職金がでる旨申しむけ、従業員が自主退職した事案。
裁判では従業員の自主退職は懲戒解雇を免れるために行ったもので意思表示として無効であるとした。

②勤務態度につき,工事記録を破棄したこと及び他の従業員との口論の際,当該従業員に中小企業の人間にとやかく言われる筋合いはないとの暴言を吐いたという点を挙げ,解雇事由(勤務成績著しく悪く改悛の見込みなしと認められたとき)に該当するので、自主退職しないと懲戒解雇される旨誤信させ、従業員をして自主退職させたという事案。
裁判では、解雇事由にあたらないにも関わらず退職勧奨により従業員が自己都合退職しなければ解雇されると誤信してなされたもので退職の意思表示は無効とした。

③経理の従業員2名が経費でコーヒー等を購入していたところ、長期で会社が証拠を収集し、懲戒処分や刑事告訴がありうることを告知し退職届を提出させたという事案。
裁判所は上記の退職勧奨は、懲戒処分や刑事告訴をされたくないのであれば自主退職すべしとするもので従業員を畏怖させるもので強迫行為にあたり退職の意思表示は取り消せるものとして退職勧奨を違法とした。

④外国人従業員に対して、配転が嫌ならば退職するしかない旨の勧告・提案をしたところ、当該従業員が「それはグッドアイデアだ」と答えたため、会社は退職勧奨を承諾する趣旨で発言したものと理解して、解雇通知を交付した事案。
裁判では「グッドアイデアだ」との発言の真意は退職勧告を承諾する趣旨ではなく、むしろ、退職勧告の内容にあきれはて大げさに表現したものと認定し、かかる退職勧奨に基づく解雇を無効とした。

要約

以上みたとおり、裁判では、退職ということの重大性を考慮し、退職の意思表示が真摯になされたものなのかを厳格に判断しており、会社側の不当な意図の下、会社を辞める他ないと誤信、或いは精神的に追い込んでいた場合には、仮に辞表があったとしてもかかる辞職は無効とされる可能性が高く、結果として会社に遡って給料の支払い義務が生じることになりかねない。

 

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