不動産トラブル

日照・眺望等は権利として保護されるのか

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結論から申し上げますと、基本的には周囲の土地建物の利用方法は、その対象物件の所有者ではなく周囲の土地建物の所有者等が決める事項であり、その物件に住んでいるものの固有の価値として眺望等が権利として保障されているわけではない。しかしながら、例によって、特段の事情が認められる場合には、日照や眺望が売主や仲介業者との関係で権利として保護されることがある。以下その特段の事情が認められた例を見ていこう。

住まいから海が見えるという眺望をセールスポイントにしたマンションを完成前に購入したが、完成してみると実際には障害物があって海がみえなかったという裁判で、「売主はマンションの販売の際に海側の眺望をセールスポイントとして販売活動を行い、買主もこの点が気に入って購入したのであり建築後電柱と送電線が対象物件の眺望に影響を与えることを予測できたのに関わらず異なった説明をしたとして説明義務違反が認められた。完成前に新築マンションを販売する際には、その実物を見聞できたのと同様の程度にまで説明する義務がある」とされている。

マンション購入後、南側隣接地に高層マンションの建築計画があり、売主は当該計画があることを南側隣接地の所有者から文書をもって知らされていたにも関わらず、これを買主にあえて伝えずマンションを販売したという事案で、裁判は「マンションを販売する者には売買契約に付随する義務としてマンションを購入しようとする相手方に対し、購入の意思決定に重要な意義をもつ事項について、知っていながら故意にこれを隠す行為をしてはならないという義務がある」として説明義務違反が認められた。一方で仮にこの計画を知らなかったとした場合には、隣接地の建築計画等について調査する義務まではないとした。

老齢の夫婦が定年退職後の住みかとして購入することを伝えていたところ、売主の担当者は個人的見解であるとことわりをいれながらも南側隣接地は国の所有地であって国のものなのでしばらくは何も建たないし建てられるとしても変な建物は建たないはずであるなどと説明したことについて、裁判では「国において早晩この土地を換金処分し、その購入者がその土地上に中高層マンション等を建築する可能性があり、マンション等が建築されると日照問等が阻害されることがあることを予想できた」と判断して説明義務違反を認めた。

④子どもが喘息もちであったため空気がよく緑がある所に転居する目的で不動産を購入後に隣接地に高い擁壁が建ち、竹や雑木が生い茂る小高い丘が広がっている環境が遮断されてしまったという事案で、裁判は「仲介業者には物件に直接関係しないことでも、購入希望者にその動機。目的に反する結果を生じることがないよう注意を払う仲介契約上の義務があるとし、本件では売買契約前から区画整理事業がおこなわれており、事業の内容によっては擁壁が設置されることや竹等が伐採される可能性があったのであり、内容について調査する義務まで認められており、仲介業者の専門性を強く認める判断となった。

買主が家庭菜園ができるような日当たりの良い住宅地を望んでいること、及び南側隣接地を買い足す希望があることが告げられていたが、南側隣接地には高架道路の建設計画があったという事案で、買主側の仲介業者は買主側の購入目的に適う土地の仲介をするために周辺土地の環境を調査し、その結果を説明報告すべき義務がある。そして、建設計画があることは、登記簿謄本を閲覧するなどの調査をすれば容易に知りえたのにこれを行っていないとして調査義務違反を認めた。そして損害額として適正評価額から高架道路の建設によって減価された額の差額、精神的損害については200万円とした。

要約

眺望等いついては、基本的に権利として認められないものの、環境にこだわりがあり、そのことが契約の内容になっていたと認められる程度にまで具体的であった場合には説明義務が認められる。特に⑤は説明義務にとどまらず調査義務まで認めており、仲介業者へ専門家として重い責任を課したものとなっている。従って購入する側は不動産の購入目的をメール、書面等で伝えることが重要なこととなる。

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