トヨタ自動車でさえ終身雇用を維持することは難しいとしており、終身雇用が崩壊した日本において、サラリーマンが副業という選択肢をとることは必然であるといえる。
では、副業を禁止している企業が多い中強行に副業を行い、それがばれた場合にはどうなるのか解説していきたい。
副業禁止の合法性
裁判では、兼業を許可するか否かについては兼業によっても使用者の経営秩序に影響がなく、労働者の使用者に対する労働提供に格別支障がないような場合には当然兼業を許可すべき義務を負うとした。
そして、トラックドライバーがアルバイトの副業を申請した事案。
・➀一回目の許可申請については、これを許した場合には副業終了後にほぼ休憩しないまま会社の業務に就くことになり夜間を含む11時間もの長時間トラックを運転することになり不許可としたことを合法とした。
・②二回目の許可申請については、1日4時間の兼業時間を含めると1日15時間もの労働をすることになり過労状態に陥ることなどを理由に不許可とした。
・③三回目の許可申請については、週一回4時間のアルバイトで、週休2日のうち1日をアルバイトにあてるというもので、合法とした。
考察
上記裁判例は平成24年のもので今から約10年程前のものであり、国において副業促進のためのガイドラインが制定される等の昨今の状況をみるに今後は更に副業の間口が広がっていくものと思われます。そして、それはいくら会社が就業規則で規制していたとしてもその規制自体が違法となるということになってくるものと思われます。上記裁判例はトラックドライバーという安全運転注意義務が高度に課されるドライバーにおいてさえ、アルバイトという他人の指揮命令下に入るという意味で重い労働を2日の休日の内1日については認めたものであり、かなり踏み込んだ判決といえる。
今後流行ってくるであろう副業は、プログラミングやウーバーイーツ、YOUTUBEなどの他人の管理下に入らず自ら働く時間等を選べる形態(業務委託等)であるので、このような場合はより柔軟に副業が認められるケースが多くなると思われます。
従って会社の就業規則で副業が禁止されているからといって全く臆することなく副業をやってみるべきでしょう。
副業を理由に解雇した事案
(1)解雇有効例
事務員として働いていた従業員が、就労時間終了後に午後6時から午前0時まで別の場所で会計係として働いていたことを理由に解雇した事案。
裁判では、無断で副業を始めたこと自体企業秩序を阻害する行為であり、雇用契約上の信頼関係を破壊する行為と評価され、本件の副業の内容は勤務時間が6時間にわたり、かつ深夜に及ぶものでアルバイトの域を超えるもので、会社への労務の誠実な提供に何らかの支障をきたす可能性が高いもので、通常解雇とした本件処分は企業秩序維持のためやむをえないものであって正当であるとした。
(2)解雇無効例
午後8時から午前2時間までタクシーの運転手をしていた者が、その後午前8時から夕方までアルバイトをしていたことを理由に解雇した事案で、裁判では、確かに、タクシー業務後十分な休息がないままにアルバイトに行くことにはなるが、アルバイト後は次の出勤まで十分休む時間があること、副業が発覚してからはアルバイトに行っていないこと、実際に業務に支障がでたことはないことを理由に解雇は無効であるとした。
考察
上記の例からわかるように、裁判所は副業禁止に反したからといってすぐに解雇できるとはしていないようで、アルバイトという重労働においてさえ、本業に支障が生じない時間帯であるならば解雇できるとはしていないようである。(※戒告等の懲戒処分が有効となることはありうる)そして、副業がもYOUTUBEや動画編集、ウーバーイーツなどの自らに裁量があるものであれば解雇はもとより、就業規則で禁止すること自体が無効になるケースが今後増えていくものと思われる。
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